サンクコスト

 どうも、キモオタ童貞検定一級保持者の琥珀銀です。


 今回はチノちゃんお誕生日絵2021を描かせていただきました。原作でも高校生になったようで、そもそも連載開始から10周年なわけで、時間は過ぎ去っていくんだなぁと実感する次第です。
 さて、ここんとこアレですな、ジョーカーさん達が大暴れしておりますな。いわく、虐げられてきた無敵の氷河期世代がついに反旗を翻したとかなんとか言われてまして、こういう事件が起きると決まって犯人は彼女いない歴=実年齢のキモオタだー! とマスコミも世間も声をそろえるのはもはや日本の様式美といえましょう。
 ただ実際のところは違っています。例えばすでに刑が執行された附属池田小事件を引き起こした宅間守死刑囚は、かつて女性経験があり獄中婚までしています。秋葉原通り魔事件の加藤智大死刑囚は学生時代に彼女がいたことが明らかになっています。座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚に至っては言葉巧みに若い女性を引き込んでいました。京アニ放火事件の犯人くらいですかね、間違いなく非モテ属性であろうと言えそうなのは。
 つまりこの手の有名な無差別殺人事件について言えば、完全な彼女いない歴=実年齢の童貞キモオタが犯人になったことはあまりありません。どちらかと言えば、かつて彼女がいたとかそれなりに経験があるものの、現在は挫折したとかで独り身になっているパターンがほとんどです。従ってウチら非モテキモオタにとっては風評被害も甚だしいと言えるわけですな。
 なんて言うか、一度良い思いをするとそれが忘れられないんでしょうか。我々のようにどうあがいたって手に入らないなら諦めもつくものの、過去に一度は手に入れたことができたから、今現在周りの人ができていることがどうにも認められないんでしょうな。人間てのは、あとちょっとで手に入りそうなものを一番執着するものです。
 それに加えて、今はご存じの通りやたらと自己責任を個人に押しつける世の中です。うまくいかないのはお前が悪い、他の人はうまくやれている、できてないのはお前だけ、努力不足だ、というやつです。そして次に来る台詞は決まって「お前の代わりなんていくらでもいる」ときて、ネットで集団リンチを仕掛けるのがこの国のお作法となっております。
 この手の犯罪を防止するには命の大切さを教えるだとか悲惨さを分からせるだとか言われておりますが、私から言わせればまったくのナンセンスです。なぜなら、「お前の代わりはいくらでもいる」と言われている時点で自分の命には価値がなくなっており、それが失われたところで悲惨でも何でも無く、それは他人に対しても同じだからです。つまり、世間がお前には価値などないと後ろ指を指し続けた結果、犯人からお前には価値などないと後ろから刺されているのが今の状態と言えるでしょう。
 従ってこの手の犯罪をなくしたいならば、その予備軍に対して他人の命の大切さを説くのではなく、まず初めにその人自身が人から必要とされている価値ある存在なんだと認めてあげるところからやるべきです。ナルシストに育てろというのではなくて、最低限のモラルである「人の嫌がることをしない」を理解させるためには、殺されたりすることをなんとも思わない予備軍に、まずは自分が殺されたくないと思わせることから始めなければならないのです。
 しかしここまで言ってナンですが、この国ではもう矯正不可能でしょうな。経団連が45歳定年制をぶち上げていることからわかるように、これからますます競争とマウント取りが激しくなり、弱者切り捨てはさらに加速します。自己責任自民党と政商竹中維新が大勝した結果からも分かるとおり、日本の有権者はさらなる新自由主義を選択したのですから、ある程度のバックラッシュとそれによる犠牲者が出ることには覚悟が決まっているはずです。
 そしてこう言うとアレですが、完全棄民扱いされたウチらキモオタ氷河期からすれば、ジョーカーが跋扈し世の中が不安定になるのはちょっとワクワクしちゃったりします。お前も巻き込まれるんだぞと言われそうですが、ウチら弱者を価値などないと切り捨てるくせに、自分だけは価値があって大切にされるのが当たり前っていう皆様が、人生棄てた連中に下剋上されるって方が痛快であることは否定できません。他人を不幸にして蹴落としてきたんだから、ジョーカーの影に怯えて暮らせと。
 ま、この手の事件が起きればお約束の自分が負け組だからといって関係ない人を巻き込んだのは許せないとか一人で死ねとか放言してさらに溝を深めていただきたいものです。不幸なのは自分だけでは無いとなれば、少しは気が済んで逆に犯罪が減るかもしれません。
 それでは、また次回まで。